不動産売却には諸費用が必要となり、売却額をそのまま受け取れるわけではありません。
売った金額から諸費用、税金を差し引いた金額が手元に残ります。あらかじめどれくらいの諸費用が必要か確認しておきましょう。
主な費用は以下の通りです。
- 仲介手数料
- 印紙税(収入印紙代)
- 不動産登記費用
- 住宅ローン返済費用
- 不動産売却益にかかる所得税・住民税・復興特別所得税
- その他の費用(引越し費用やハウスクリーニング費用など)
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産会社に売却の仲介を依頼した場合に発生する費用で、「通常業務で発生する費用」として請求されます。不動産会社によって通常業務の範囲は異なりますが、一般的には不動産情報ウェブサイトに情報を掲載したり、チラシを配布したりといった販売活動を指します。
買主さまを見つけるために、特別に広告を出したり、遠隔地へ営業に出かける場合には、仲介手数料とは別に請求されることもあります。法定の仲介手数料で、どこまでの販売活動をしてもらえるのかチェックしておくと良いでしょう。
また、仲介手数料は成果報酬であるため、売買契約を締結した時に支払うことになります。ただし、契約が成立した段階では引渡しがまだ済んでいないことがほとんどです。そのため、売買契約成立時に50%を、引渡し完了時に残りの50%を支払う方法と、引渡し完了時に一括で支払う方法が一般的です。
仲介手数料の相場
仲介手数料の上限額は「宅地建物取引業法」で定められていて、売却価格によってその額が変わってきます。具体的には、以下の通りです。
200万円以下の部分:売却額の5%+消費税
200万円を超え400万円以下の部分:売却額の4%+消費税
400万円を超える部分:売却額の3%+消費税
売却金額が400万円を超える場合は、以上をまとめて以下の計算式で求めます。
仲介手数料=(売却額×3%+6万円)+消費税
例えば、500万円で売買契約が成立した場合の仲介手数料の上限額は、
(5,000,000円×3%+60,000円)+21,000円(消費税)=231,000円
となります。
印紙税
印紙税とは、不動産売買などに際して発行される契約書や領収証など、特定の文書に対して課される税金です。売買契約書に印紙を貼付し、消印することで納税します。
その契約書の記載金額よって課税額は変わってきます。租税特別措置法により、2014年4月1日から2022年3月31日までの間に作成された不動産売買契約書のうち、契約金額が10万円を超えるものに関しては、印紙税の軽減措置が講じられています。印紙税の課税額は以下の通りです。
10万円を超え、50万円以下のもの:本則税率400円 軽減税率200円
50万円を超え、100万円以下のもの:本則税率1,000円 軽減税率500円
100万円を超え、500万円以下のもの:本則税率2,000円 軽減税率1,000円
500万円を超え、1,000万円以下のもの:本則税率1万円 軽減税率5,000円
1,000万円を超え、5,000万円以下のもの:本則税率2万円 軽減税率1万円
5,000万円を超え、1億円以下のもの:本則税率6万円 軽減税率3万円
1億円を超え、5億円以下のもの:本則税率10万円 軽減税率6万円
5億円を超え、10憶円以下のもの:本則税率20万円 軽減税率16万円
10憶円を超え、50憶円以下のもの:本則税率40万円 軽減税率32万円
50憶円を超えるもの:本則税率60万円 軽減税率48万円
印紙税は文書1通単位で課税されます。売主さま、買主さま各1通の場合、2通分の印紙税が必要となります。 印紙税を納めなかった場合、3倍の過怠税が課されるので注意しましょう。
不動産登記費用
不動産を売却する前に、抵当権設定登記を抹消しておく必要があります。この抵当権設定登記を抹消するのに費用が掛かります。
抵当権とは、住宅ローンを組む際に、融資した金融機関が不動産を担保として扱える権利のことです。ローンの返済が滞ったときに、金融機関は抵当権を行使して不動産を差し押さえることができるのです。
ローンを完済すると抵当権設定登記を抹消でき、登記情報を更新できます。登記を行う場合、不動産一筆につき1,000円の登録免許税がかかります。
ただし、不動産の登記は手続きが複雑で手間がかかるため、司法書士へ手続きの代行を依頼するのが一般的です。この時の司法書士への報酬は2万円程度を目安とすると良いでしょう。
個人で行うよりも費用は嵩みますが、重要な手続きなので司法書士に依頼して行ってもらう方が安心です。
住宅ローン返済費用
不動産を売却するためには、ローンを完済しなくてはなりません。残債がある場合、引渡しまでに支払いを完了しなければならないので、一括での繰り上げ返済が必要です。
繰り上げ返済には事務手数料がかかります。手数料は各金融機関や手続きの方法によって異なります。ここでは、主な金融機関の手数料を紹介します。(2020年12月15日現在)
三井住友銀行の場合、インターネット手続きは5,500円(税込)、窓口(専用パソコン)での手続きは11,000円(税込)、窓口(書面)での手続きは22,000円(税込)となっています。
三菱UFJ銀行の場合、インターネット手続きは16,500円(税込)、テレビ窓口での手続きは22,000円(税込)、窓口(書面)での手続きは33,000円(税込)の手数料がかかります。(2021年3月時点)
インターネットで手続きすると、手数料を安く抑えられます。各金融機関のサービスを確認し、できるだけ費用を抑えることができる手続きを探してみましょう。
住不動産売却にかかる所得税・住民税・復興特別所得税
不動産を売却したことによって利益が出た場合、確定申告をして所得税等を納めなくてはなりません。 不動産売却にかかる所得税等の種類は物件を所有していた期間に応じて、短期譲渡所得と長期譲渡所得に分けられます。
短期譲渡所得:不動産の所有期間が5年以下。所得税30%、住民税9%の対象。 長期譲渡所得:不動産の所有期間が5年を超える。所得税15%、住民税5%の対象。
注意すべき点は、取得期間の計算方法です。土地や建物を売った年の1月1日時点で5年を超えるか否かで判断します。例えば、2015年4月1日に購入した不動産を2020年の4月1日に売却した場合、2020年1月1日時点では5年を経過していないため、「短期譲渡所得」として課税されます。 短期譲渡所得と長期譲渡所得では税率が大きく変わるので、売却のタイミングを考えることも重要です。 さらに、2011年に発生した東日本大震災の被災者支援の財源にするために、不動産を売却した所得に対して復興特別所得税を支払う必要があります。復興特別所得税の金額は下記から算出できます。
復興特別所得税:復興特別所得税額=基準所得税額×0.021 = 課税所得金額×(所得税率(%)÷100)×0.021
その他にかかる費用
これまでに紹介した費用は主に、売買に関する手続きにかかる費用でした。
しかしこれら以外にも、場合によっては必要となる出費があります。これから紹介する費用に関しては、必ずしも発生するとは限りませんが、不動産売却を成功させるために必要となることがあるかもしれません。注意点を記載しましたので、参考にしてください。
ハウスクリーニング費用
所有している建物が年数のたっているものだったり、傷みが激しかったりする場合、できるだけきれいな状態にしておくことが重要です。状態の良い物件のほうが買主さまが見つかりやすくなりますし、売却価格に良い影響を与えるかもしれないからです。
壁紙や水回り、物置などの汚れが目立つ場所は、自力での掃除できれいにするのは難しいでしょう。ハウスクリーニングの依頼も検討しておくべきです。費用の額は部屋数や面積によりますので、見積もりをとり確認してすすめましょう。
また、建具の一部が破損している場合などは、リフォームの必要があるでしょう。リフォームの費用は高額になることが多いですが、買主さまを見つけるためには、修復しておいたほうが有利な場場合もあります。
測量費用
売りに出されている土地は、隣地との境界をはっきりと示していることがほとんどです。土地の面積や境界が確定していると、隣地などとの紛争を回避したり、地積をもとに売却価格を確定できたりします。
測量費用は売主さまが負担することとなるので、買主さまから測量を依頼された場合、必要な出費となる場合もあるので注意しましょう。
土地を売却するとき、建物を取り壊して更地にする必要がある場合、解体費用もかかります。
解体費用は建物の造りと、床面積やアスベストの有無等によってかかる金額が変わります。
引越し費用
当然、売却した物件から新居への引越し費用もかかります。これは荷物の量と、業者に運んでもらう距離や、時期によって変動しますが、4~5人家族では20万円程度を見積もっておくと良いでしょう。
引越し費用を抑えるために、古くなった大きな家具などは処分して、身軽にしておくことも大切です。
必要書類の発行費用
不動産売却の際に必要となる書類を準備するのに費用がかかることがあります。例えば固定資産税評価証明書や住民票などです。 手元にない場合は役所などで発行してもらう必要があります。発行手数料は300円前後が一般的です。